受験に役立つコラム

2023年中学入試の動向と注目校

2023年3月13日
執筆:日能研関西 進学情報室 室長 森永 直樹氏

◉私学ブーム到来!?

 近畿圏の中学入試は、コロナ禍で3回目の入試となりましたが、今年は新型コロナウィルスとインフルエンザの同時流行に備えた対応が求められ、これまでの2年間に準じた形での実施となりました。

 統一入試開始日の1月14日の午前の受験者数は17,279人で昨年より387人増加しました。

 また中学受験率(統一入試開始日の午前の受験者数÷近畿2府4県の小6児童数)は10.01%となり、昨年の9.74%から急上昇しています。中学受験率が10%台となるのは、2009年以来14年ぶりです。

 少子化の影響で今年の受験学年の児童数は昨年よりも減少しています。その中で中学受験者が増加したのは、昨今のコロナウィルス感染症の拡大に伴う社会情勢への対応や、オンライン学習など教育環境の充実を求める声が高まったことなどが、私学教育への期待につながったとみられています。今年の受験学年は休講措置がとられた時の4年生にあたり、そういった期待をうけた最初の学年です。

 2023年入試で受験生が増えた学校は、大きく二つに分かれます。

一つは昨年の安全志向から一転、揃って志願者数が増加した「難関校」です。これはレベルの高い受験者層が増えたというのではなく、従来の受験に戻った結果と考えられます。

 もう一つは、軽めの受験対策で合格できるレベルで、「特色ある教育」や「整った教育環境」など私学らしさを感じられる学校です。今年の受験者増につながったのはこういった学校に、これまでにいなかった新しい中学受験者層が反応したことが大きな要因です。今後も続く傾向なのか次年度以降が注目されます。

◉入試動向 ~2022年からの変化~

 昨年の入試では、入試難易度の高い難関校が揃って受験者数を減らすという、安全志向でしたが、2023年入試では、昨年の受験生ほどには、コロナの受験勉強への影響が少なかった受験生が多く、積極的に第一志望校に挑戦する動きが回復し、トップ校の志願者数は予想通り増加することになりました。

 たとえば、全国最難関の灘は志願者数で93人増と大幅に増加しましたが、これは近畿圏だけでなく全国的に同じ傾向でした。さらに志願者ベースでは東大寺学園が63人増、甲陽学院が37人増、神戸女学院が25人増、洛南高校附属が108人増となっています。難関校の多くで志願者数の増加が目立つ入試となりました。

 コロナ禍の入試で減少傾向となっていた「府県またぎの受験」にも注目していましたが、2023年入試ではコロナ以前の状況に戻ったと思われるような受験動向となりました。他府県からの受験生がある程度見込まれる学校群の総志願者数が大幅に増えています。兵庫や大阪からの受験生が多い奈良の帝塚山で179人増、いずれも兵庫からの受験生が多い大阪の清風で179人増、明星で118人増、開明で508人増となっています。自宅からのアクセス(距離)よりも学校の持つ魅力を優先した従来の受験に戻りました。

大学付属校人気は依然高い状態にありますが、2023年入試ではその人気に変化が見られました。

 初日の午前の志願者数でみると、人気の高い関関同立系の付属校の合計では41人増加し、一方で産近甲龍の付属校が56人減少し、その人気が関関同立系に集中しています。

 大きく減少したのが、関西学院と同志社香里(女子)で、近年の難化が影響して受験を回避したと考えられます。ただ減少数が大きいことから、大学付属校志向であった上位層が進学校へシフトした可能性もあるように思います。


◉2023年入試の注目校!!

 2023年入試で大きく志願者数を増やした三つの学校を、その注目点とあわせて紹介します。

 一校目は大阪の初芝立命館中学校です。

 人気の立命館大学に連結するコースを持つ学校で知られていますが、提携校であるメリットを最大限活かした教育環境のもとで実践される先進的な教育に期待がよせられています。

 実際の入試では初芝立命館中学校の総志願者数が964人で昨年比の146%となり、入試もやや難化傾向にあります。

 二校目は兵庫の滝川中学校です。

 昨年は「新コース」で話題になり、来年の2024年入試から共学(一部コースを除く)になることで注目されています。この2023年入試では、最後の男子のみの募集となることが少し影響するのではないかという見方もありましたが、それよりも「医進選抜コース」など新コース制の評判が勝り、ほぼ昨年並みの志願者数となりました。次年度はここに女子が入ってくることになるので、ある程度の難化が予想されています。

 三校目は大阪の関西大学中等部です。

 大阪に三つある関西大学の付属校の一つです。併設の小学部からの内部進学者がいるため、外部募集が100名を切ることから、これまでは目立つ存在ではありませんでした。しかし近年ではJR高槻駅すぐという立地の良さに加え、定評あるグローバル教育や豊富な理科実験などの特長ある教育に目がとまるようになり人気上昇中です。

 今年の入試では総志願者数が571名で昨年比の154%となり、増加率では大阪府で一番の学校となりました。入試も難化しているので、今後がさらに注目されます。


◉新タイプの入試について

 近年増加傾向であった新タイプ(プレゼンテーション・プログラミングなどを含む)の入試に注目していましたが、昨年話題になった金蘭千里の中期入試で実施された得意科目選択型(国語または算数)は親和(兵庫)で国語一科目入試が追加されるなど広がりを見せましたが、そのほかでは目立った動きはありませんでした。

 一方で増加傾向が続いている「英語資格加点措置」をとる学校は昨年から増加して59校となりました。内容については学校ごとに差があるのでよく調べておく必要があります。

 

 

PROFILE 森永直樹(もりなが・なおき)

日能研関西 取締役。教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを経て2017年より現職。生徒への指導や保護者へのアドバイスを行うほか、私学教育、中学受験に関する講演などでも活躍。

 

 

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