受験に役立つコラム

2024年関西圏中学入試の展望と注目校

2023年12月4日
執筆:日能研関西 進学情報室 室長 森永 直樹氏

2024年入試の展望

 近畿2府4県の中学入試(統一入試開始日)まであと1か月あまりとなりました。新型コロナウィルスが5類となりましたが、まだ感染者がいる状況であることや、インフルエンザの大流行への対応が必要となることから、各学校においてはコロナ禍(これまでの3年間と同じ)と同じ対応で実施する学校が多くなりそうです。

 今年の入試動向から、2024年度入試の注目点について以下の3点に注目しました。

①受験者数はどうなるか?

 大手の進学塾で実施されている公開模試の数から類推すると、対前年比で増加しているのがわかります。2023年で増えた受験生は短い準備期間で比較的入りやすい学校を狙うケースが多く、増加が読みづらい状況でしたが、この6年生の学年はしっかりと準備をして、難関進学校から人気の大学付属校までを受験することが予想されます。

 また学校開催のイベントや大規模で実施されている合同相談会の状況から、多くの学校や合同相談会は前年よりも好況で、コロナが5類認定されたことを差し引いても、受験生が増えそうな状況であることは間違いありません。

 以上より、2024年の中学受験者数は増加するとみています。その規模は17,500人を越えて17,650〜17,700人あたりまでと予想しています。昨年から今年にかけての増加分くらいは確実に増えるでしょう。そうなると中学受験率は10.2%を越え、過去最高レベルになります。

 

②「強気の受験」は続くのか?

コロナ禍で続いていた「安全志向」から一転、難関進学校で「強気の受験」が復活したことが2023年入試の大きなトピックでしたが、前でも触れていますが、コロナの影響も少なくしっかりと準備をすすめてきた学年なので、多くの難関進学校は昨年以上の志願者となるでしょう。

 特に全国から受験生が集まる「灘」には注目しています。「灘」に全国から受験生が集まるのは、全国のトップレベルの受験生が集まる中で、2日間の入試(国語と算数はタイプの違う試験を2回)が体験できることだけでなく、開示される得点をもとに入試を振り返ることが、この後に続く本命の試験にむけての有効な対策になるからです。コロナが5類になったことでさらにハードルが下がったので、過去最高の志願者数になるかもしれません。

 

③大学付属校人気はどうなる?

 近年右肩上がりの人気を見せていた大学付属校ですが、昨年と今年の2年でやや頭打ちになってきています。理由は2つあると考えています。まず一つ目は、頭打ちになったとはいえ、既に大きな規模の志願者数になっていること、二つ目は近年の志願者の増加によって難化していることにあります。

 2024年入試では大学付属校については今年と同じような規模の志願者数と予想しています。傾向も今年と同様に「関関同立」の系列校に集中しそうです。近年の難化で受験を回避する傾向で志願者が減少した「同志社香里」や「関西学院」の志願者数は増えそうです。その理由は難関進学校でも述べたように第一志望校を見据えしっかり準備してきた学年だからです。

 また、2科目入試に変更となって2年目の同志社も入試問題や難度が明確になったので男子を中心に受験生が増えると予想しています。

2024年入試の注目校

 共学化される兵庫の滝川中学校や新コースが話題の兵庫の親和中学校、武庫川女子大学附属中学校、大阪の初芝立命館中学校の志願者動向には注目しています。そのほかでは、「探究学習」に強みのある学校にもっと注目してもらいたいので、ここで紹介いたします。

 1校目は兵庫の男子校の淳心学院です。                                                                        非常に中身の濃い探究学習に取り組んでいるのが特徴で、研究テーマがおもしろく、プレゼンテーションも秀逸です。もともと学内のコンテストが大変な盛り上がりを見せていたのですが、日本最大級の探究学習の祭典「クエストカップ」において、2023年度のグランプリを受賞したことで、その実力が学外でも証明されました。学校全体で探究学習に取り組もうという雰囲気があり、それを引っ張ることのできる優秀な先生方がたくさんいるというのも、大きなポイントです。

 もう1校、特色ある探究学習で注目したいのが、奈良の女子校の育英西です。                                                       同校では、中2から中3の1年間をかけて、自分たちの身の周りのコミュニティでの課題を発見し、問題解決につなげる探究学習「コミュニティプロジェクト」に取り組んでおり、同時進行でさまざまなプロジェクトが動いています。                                                                             中でもユニークなのが、食育の一貫として行っている「お弁当総選挙」です。これは、生徒が「お弁当で世界を変える」をテーマに、社会課題解決につながるお弁当を開発するものです。栄養面、見た目、価格設定などを考慮したお弁当を調理実習でつくり、クラス内でのプレゼンテーションを経て選ばれたチームのお弁当をホームページに掲載します。その後ネット投票を募り、1位に選ばれたお弁当は、企業と連携して商品化するという本気度の高い企画で、2014年のスタート以降、年々盛り上がりを見せています。地域や地元企業との連携が盛んな同校らしい、課題解決型プログラムと言えるでしょう。

PROFILE 森永直樹(もりなが・なおき)

日能研関西 取締役。
教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを経て2017年より現職。
生徒への指導や保護者へのアドバイスを行うほか、私学教育、中学受験に関する講演などでも活躍。

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