受験に役立つコラム

2024年中学入試の動向と注目校

2024年2月27日
執筆:日能研関西 進学情報室 室長 森永 直樹氏

 ●中学受験率は過去3番目の高さ!

 今年の近畿二府四県の統一入試開始日(1月13日)の午前の受験者数は17,312人で昨年より33人増加しました。

 少子化の影響で小学校卒業児童数が2,359人減少したものの、受験者実数としては20年ぶりに2年連続の増加となり、私学志向の高まりは続いています。その結果、2024年入試の中学受験率は10.17%に上昇し、過去3番目の高さになりました。

    入試回数は、初日午前123回、初日午後65回、2日目午前68回、2日目午後46回となり、初日・2日目の入試回数は全日程の約73%となっています。前期試験だけでなく、後期試験の設定など、同じ学校でも複数回の入試を設定している学校も多く、関西エリアでは全体として一週間近く続く入試となっています。ただ実際には午後入試の設定もあり、初日と2日目でほぼ志望校の合格を勝ち取る短期集中型の入試となっています。

   2024年入試は新型コロナウィルス感染症が第5類となって初めての入試となりましたが、まだ感染が終息していない状況であることや、インフルエンザの流行への対応が必要となることから、入試対応としてはコロナ禍とほぼ同じ対応で入試が行われました。具体的には、一教室あたりの受験者数や、付き添いの保護者の人数制限、塾への激励の自粛要請など、入試を実施することで感染が拡大しないような対策が引き続きとられています。

 入試当日のコロナ陽性者・インフルエンザ感染者など体調不良者への対応は各校によって分かれています。振替受験が可能な学校、また追試験は実施せず別室受験のみを可能とする学校など、次年以降も確認が必要な項目となります。

   一方、コロナ禍で中止となっていた「面接」が、5類となったことで再開されることとなり、午後入試に間に合うかどうかの影響も出た入試でした。

 

●入試動向 ~2023年からの変化~

 昨年はコロナの影響がやや薄れ、積極的に第一志望に挑戦する「強気の受験」となっていました。2024年入試は更にコロナの影響も少なくしっかり準備をすすめてきた学年のため、全体としてコロナ前の傾向に戻り、昨年に引き続き「強気の受験」だったと言えます。特に男子の志願者大幅増の状況を昨年との対比で見てみると、灘(1人増)、東大寺学園(3人増)、甲陽学院(13人増)、洛星(27人増)という結果になり、男子最難関校の多くで志願者数の増加が見られる入試となりました。

 全国最難関の灘に限って見ていくと、志願者数を大幅に伸ばした昨年入試と比べて2024年入試では志願者数1人増とはなりましたが、志願者数は2年連続700人超えで実質倍率も2.78倍と高水準を保っています。灘への首都圏からの志願者数は、昨年からの13人増の175人となり、2020年より増加傾向が続いています。微減の関西では唯一京都で増加しました(昨年から7人増の39人)。

 近年右肩上がりの人気を続けてきた大学附属校である「関関同立」の系列校の志願者が昨年に続いて横ばいとなりました。高い人気を保ったままの足踏み状態と言えます。統一入試日午前の系列11校の願者数の合計は昨年対比15名の増加となっています。

 個別に見ると、昨年から増加したのが、同志社(77人増)、同志社香里(30人増)、立命館(22人増)でした。その中でも大きく伸ばした同志社については、国算2科目の受けやすさと独自の教育内容の魅力によるものとみています。逆に減少したのが、関西大学第一(58人減)と関西大学中等部(35人減)ですが、ともに昨年の大幅増の反動とみられ、人気は高止まり状態となっています。

 昨年はライトな受験生の増加が話題となりました。「特色ある教育」や「整った教育環境」など私学らしさを感じる学校で、比較的軽めの受験対策で狙える学校が多くの志願者を集めました。今年も同じような傾向が続きましたが、特に目立っていたのが大阪でした。全日程での総志願者数で、履正社が392人で前年比131.1%に、追手門学院大手前が458人で前年比129.4%など大幅増の学校が多くみられました。これらは、今年受験する学年が大阪府の高校授業料無償化の所得制限撤廃の対象学年になっていることから、これを機に新たに「中学から私学進学を考える家庭」が増えたのかもしれません。

 

●2024年入試の注目校!!

 人気の上位コース(医進選抜コース・サイエンスグローバルコース)が男子校から共学となる兵庫の滝川中学校は、初めて女子入試が行われた入試でしたが、前期午前で114人(前年比135.9%)、全日程で840人(前年比138.2%)と、共学一年目から女子の出願が好調でした。特に女子のサイエンスグローバルコースへの人気が高く、次年度以降の動向も注目されています。

    昨年大幅に志願者数を増やして話題になった大阪の初芝立命館中学校は新設のUS(ユニバーサルスタディ)コースが注目されていました。結果は前期午前で204人(前年比159.4%)と、昨年に引き続き大阪の統一入試日午前の志願者数増加率一位となりました。また全日程でも1,205名(前年比125.0%)となっています。

 

●新タイプの入試について

 昨年注目されたのが「一科目選択入試」でした。これは得意科目を「国語」・「算数」・「英語」から一つ選んで受験できる入試形態です。帝塚山学院では、この得意教科型入試として、国語・算数の2教科のうち得意科目の比重を変えその中から得点の高いものを採用する方式が導入されました。国語が得意であれば、国×2+算、算数が得意であれば、算×2+国、国算型であれば、(国+算)×1.5というように得意科目を武器にでき、もともとの学校人気もあって志願者数を伸ばしています。

 また、兵庫の女子校の松蔭では、課題図書プレゼン入試を実施しています。これは他校でも実施されているプレゼン入試の発展型で、2024年入試でプレゼン入試を実施した学校の中で最も多い10人の出願がありました。このように自分の得意科目で勝負できる入試は受験生にとっても支持されやすいため、今後も増えていくと思われます。

 

PROFILE 森永直樹(もりなが・なおき)

日能研関西 取締役。
教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを経て2017年より現職。
生徒への指導や保護者へのアドバイスを行うほか、私学教育、中学受験に関する講演などでも活躍。

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