受験に役立つコラム

新たな学校選びのカタチ

2024年4月25日
執筆:日能研関西 進学情報室 室長 森永 直樹氏

  • 新たな学校選びのカタチとは何か

 これまで、私立中高一貫校の分類スタイルとして、「進学校/大学附属校」とカテゴリーを分けて考えてきました。教育上のシステムとして併設大学があるかないかというのは大きな違いですが、実際には「大学附属校・系列校・継続校」であっても、併設大学への内部推薦による進学制度を保持したまま、難関国立大学や医学部など他大学への進学サポートを行う学校もあります。また、「進学校」の場合でも、基礎学力を徹底して定着させた後、圧倒的な入試問題演習によって難関大学への進学を視野に入れる学校もあれば、生徒の自主性を重んじ探究活動を積極的に採り入れる学校、芸術表現活動など教養主義を貫く学校など、私学の校風はかなりバラエティーに富んでいます。ここでは、幅広く多様化する教育内容を踏まえ、私学それぞれがどのような観点を重視して子どもたちを成長させようとしているのか、学校選びの新たな観点を提案します。

 

  • 学校教育の転換期

 今の小学生が社会に出るころに必要とされる力は、AIの加速的な進化やグローバル化により大きく変わることは間違いありません。またその前にある大学入試も「総合型選抜入試」へのシフトが予想され、「多面的な能力を評価する」選抜方法への対応など、中高の教育が転換期をむかえています。

生徒個々の能力を、多彩な取り組みを通じて引き出し高めてきた私立中高一貫校だからこそ、今後大学入試制度がそのような形になろうとも、心配することはありません。教科教育における高学力の育成を当然のこととしながら、生徒自らが探究するプログラムが確立しているからです。これからの学校選びは、具体的な活動内容を知ることから始めなければならないでしょう。

 

  • 「これまで」と「これから」の学校選び

 中学受験をすると決めた段階で、実は6年先の大学進学を見据えた学校選びになります。

「関関同立」(関西大・関西学院大・同志社大・立命館大)のような附属(系列)中・高は、併設大学への内部推薦制度による進学者が多く、ゆったりとした大らかな校風のもとで、勉学だけでなくスポーツや課外活動にも取り組むことができるというメリットがあります。

国公立大学や医学部志向の生徒たちは、「進学校」を選択するというのが定石とされてきました。私立中高一貫校の生徒たちは、その多くが大学に進学します。当然、教科型の大学入試をクリアするための学力を身につけますが、その後の高等教育の場における研究活動をスムーズに行うための学びや、就職後の社会人としての生き方までも含めて、豊かな人間力を育むことが目標とされています。全人教育を標榜しながらも、私学はそれぞれアプローチの方法が異なります。これからの学校選びには、どのような観点に重点を置いて教育を行うタイプなのかを知ることが大切です。

 

  • 新しい学校選びの4つのパターン                               

               

 上の図表の示すように、これまでは「6年後の大学進学」が学校選びにおける優先事項であったのが、これからは「新時代に社会で生き抜く力」が優先事項となると予想しています。少なくとも大学進学に並ぶ重要ポイントとなることは間違いありません。

 中高の6年間で身につく力を、①学力・②キャリア形成につながる力・③社会で必要とされる力と3つに分け、①の「学力」以外に学校教育に期待するのは②なのか、③なのかといったように私立中高一貫校それぞれのアプローチ方法や重点を置くポイントの違いなど独自の「教育コンテンツ」に注目する学校選びを提案します。

 具体的に以下に4つのパターンを示しています。それぞれのパターンを意識しながら私学教育のナカミに注目しましょう。

これからの学校選びは「アクセス―通えるのか」、「校風・教育理念―わが子に合うのか」に、もう一つ「4つのパターン―期待する教育コンテンツは何か」を加えてください。

 

<パターン1> 「学力+キャリア形成につながる力」重視型  

生涯にわたり通用する「継続性のある知識・テクニック」

 社会に出てから永続的に通用する知識・能力を身につけることを重視します。例えば、異文化理解につながる海外研修や留学プログラムで世界への理解を深める。また、文部科学省の指定を受けて行うスーパーサイエンスハイスクール(SSH)等で、科学に触れ研究発表まで行うなど、自ら課題を発見し、主体的に考え、解決まで導くことのできる力などがこれにあたります。

→代表校:須磨学園・高槻         

   

須磨学園                  高槻                   

                       

<パターン2> 「学力+社会で必要とされる力」重視型  

相手の立場を理解し「自他共栄」をめざす内面の力を重視

 人と人が共に豊かさをめざす社会では、他者と協力をして物事を成し得ていく力が必要です。そこで必要とされるコミュニケーション能力や協働力の習得を重視します。例としてボランティア活動や地域活動などに取り組むなど、様々な活動の中での他者との摩擦により自らの内面をに気付き、相手の立場を理解しつつ、主体的に行動できる力などがこれにあたります。

→代表校:六甲学院・京都女子

   

六甲学院                  京都女子

 

<パターン3> 「学力+キャリア形成につながる力+社会で必要とされる力」重視型 

広く門戸が開かれ、多彩な選択肢が用意されている

 学力と人間形成をバランス良く行われるバランス型では、例として学びのカリキュラムが幅広く用意され、その選択肢の中から自ら選びとり継続していきます。また、探究活動や教育カリキュラムが充実する学校では、挑戦し達成することで力をつけていきます。生徒を広く受け入れる学校が多く、中には施設・設備に力を入れている、または立地にも特色をもつケースもあります。

→代表校:雲雀丘学園・同志社香里

   

雲雀丘学園                 同志社香里

 

<パターン4> 「学力+教育コンテンツ(〇〇力)」注目型 

専門能力を伸ばすコースやプログラムが魅力

 インパクトのある独自の教育体系をもつのがこの注目型。例えば、他に類を見ない学校行事があったり、特徴的な教育カリキュラムが実践されたりしています。子どもの個性を見た時、その教育に特に魅力を感じることもあるでしょう。その専門性は更に伸ばされ、その結果、他の能力をも引き上げられる効果を持つのがこの注目型です。自信となり精神力をも鍛えられます。

→代表校:関西学院・清風

    

関西学院                   清風

 

PROFILE 森永直樹(もりなが・なおき)

日能研関西 取締役。
教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを経て2017年より現職。
生徒への指導や保護者へのアドバイスを行うほか、私学教育、中学受験に関する講演などでも活躍。

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